白生地ができるまで

白生地は、友禅染めや型染、絞り染めといった染めの着物に必要なものです。縮緬は白生地の素材の中で最も代表的なものになり、緯糸に撚りをかけて織ることでシボができます。縮緬の二大産地である長浜と丹後では盛んに白生地作りが行われています。

浜縮緬

柔らかなシボの風合い

浜縮緬は、西には琵琶湖、東には伊吹山という環境の滋賀県長浜市で模様のない白生地が織られています。丹後から伝えられた縮緬の技術は、1752年頃に二人の職人の手によって始まり、その後、彦根藩が保護したことで発展しました。人の力はもちろんですが、長浜の気候や風土も浜縮緬を支えていました。琵琶湖の水は世界屈指の軟水なので生糸に適しており、今も湖の水を用いることで精錬の作業が行われています。無地の白生地が主流の浜縮緬。一越縮緬や古代縮緬、東雲縮緬、変わり縮緬といった様々な名前がついていますが、いずれもシボの出し方で仕上がりの表情を変える違いがあります。

丹後縮緬

華やかな模様入り

京都の北西部にある丹後地方にて作られるのが丹後縮緬になります。乾燥がダメな絹織物は、雨が多くて湿度の高いこの地方に適しているので、昔(奈良時代)から絹布が織られていました。江戸時代中期頃に丹後に住む絹屋佐平治が、京都西陣でシボの出し方や糸撚りといった秘伝の技を学んで、丹後に縮緬を持ち帰ったのが始まりとされています。伝統を今でも大切にしていて、現代感覚に合う模様入りの紋縮緬や無地縮緬が織られています。白生地に織り柄の入った紋縮緬が丹後では主流になります。模様は多種多様になり、織物組織によって模様の見え方に違いが出てきます。模様入りの白生地での色無地は、無地染だとしても華やかに見えます。

①糸を乾かす

白生地の製作に使われる糸に、滑らかさや柔らかさ、静電気防止などのために油剤をつけます。水気を取るために糸を脱水して、しっかりと乾燥させます。

②綛糸(かせいと)を巻き取る

糸繰りの作業として、綛になっている糸をボビンに巻き取っていきます。ゆっくり巻いていき、生糸本来の風合いを残していきます。この後にある工程で糸切れがおこらないように、きちんと巻き取っていきます。糸の産地や繊度(糸の太さ)の目安として糸に色をつけていて、精錬によって簡単に落ちる染料を使います。

③経糸の本数や長さを揃える

整経とは、経糸を機織に仕掛けるために、長さや幅、本数を整えることをいいます。目的の長さに巻き取るため、ボビンで巻き取った糸を500個くらい並べます。これを数十回繰り返すことで、8,000〜10,000本の本数を用意します。製品として一本でも切れた糸があるダメなので、切れた糸があるとセンサーが数えてくれます。

④糸に撚りをかけていく

緯糸に撚りをかける工程になります。下準備が終わった緯糸に対して、目的に合わせ撚りをかけます。方法として二つあり、湿式の八丁撚糸と乾式のイタリー撚糸があります。壁糸を作るにはイタリー撚糸機を使っており、その糸を変わり縮緬の一部に使用します。その際の道具としてフライヤーと呼ばれる足のついたものを用いていきます。

古代縮緬や一越縮緬などに八丁撚糸が使われています。水を糸にかけながら撚りを強くかけていきます。

八丁撚糸は別名水撚り撚糸ともいいます。水を下管に巻かれた糸にかけながら1mの間に2,000から4,000回の撚りをかけていきます。浜縮緬の工場では水にこだわり、伊吹山の雪解けの地下水を使っています。

紋紙が紋縮緬には必要

経糸の上げ下げを織機に指示を出すのが紋紙になり、今では紋意匠図のデータを収めたフロッピーディスクと短冊の紋紙が使われます。模様のもとになるデザインを考えて意匠図案を起こし、紋紙を作っていきます。

⑤白生地を織る

経糸と緯糸の準備ができたら、織機に経糸をセットして、2・3種類の緯糸を使いながら織っていきます。昔は浜縮緬や丹後縮緬ともに手織りでしたが、今では力織機を使って織られています。丹後縮緬では主に、模様入りの場合だと、織機にフロッピーディスクを挿入する方法と短冊形の紋紙を使う二つの方法にて織られています。

⑥セリシンを取り除く

セリシンとフィブロインからなるタンパク繊維の生糸を使って縮緬を織っています。これまでの製作工程や準備にセリシンが大事な役割を果たしていましたが、風合いや染色になると不要になってきます。そこでセリシンを精錬液につけて溶かしていきます。この作業を精錬と呼びます。100度の精錬液の中に7〜8時間くらいつけます。軟水がセリシンを溶かすによいとされており、琵琶湖の水を長浜では用いていて、丹後ですと工業用水を軟水にしたものを使っています。

⑦生地の幅を出す

精錬をした生地を脱水してその後に、仕上げの加工をしていきます。適度に給湿されたものを規格に合わせた幅に整えていく作業を一般的に幅出しと呼びます。給湿量を調整することでシボの風合いが大きく変化しますので、大事な仕事になります。生地の伸縮を熟知していないと、指定された幅や長さに調整ができません。

⑧品質を調べる

いくつもの工程を経て出来上がった生地を調べるのが検査になります。検査には二つの方法があり、キズや織りやシボむらを発見しやすい水平式と汚れや縦筋を発見しやすい立て流しを組み合わせておこないます。検品は品質を調べることもあり集中力が勝負になります。問題のある箇所を見つけたら色糸を使いマークします。

⑨合格の印を押す

重さが基準になる縮緬は、品質表示法で定められている量目を布の端に記入しています。そのため、秤りで一つ一つの反物の重さを量っていき、白生地に数字を手書きします。この作業が終わりますと、ようやく合格の印をもらうことができます。その際、組合で定められた表示印章を反物の端に押します。