着物にある紋の格と種類
着物ちゃん
そうなんです。着物に紋が存在することは知っていても格があることまではあまり知られていません。
今回は、着物の紋における格や種類について紹介していきます。
管理人
着物にある紋は、個人や家、所属する団体を識別するためにあります。この紋を持っているのは、世界でも欧米の上流階級と日本だけと言われています。
そもそも家紋の歴史は、平安時代まで遡ります。公家が衣服や調度品、牛車に用いたのが始まりになります。鎌倉時代になりますと武士も紋を持つようになります。庶民にまで広がったのは、江戸時代の頃になります。
庶民の紋に対する意識としては、公家や武士のように家柄や格式というのではなく、着物に装飾を追加するということで使われ、独自の文化として発展を遂げました。
紋の格とは
紋の格ですが、「紋の数が多い」「縫いよりも染め」「色付きよりも白」この3つの条件が揃うものほど格が高いということになります。
紋を入れる数
着物に紋を入れることで、格の高い着物と判断されます。フォーマルな場に出るときは、格の高い着物を着る必要があるため、紋入りの着物を着ることがマナーとされています。
ただし、紋を入れればいいというだけではなく、紋が幾つ入っているのか、この点にも注意をする必要があります。
紋を入れる数ですが、「五つ」「三つ」「一つ」と決まっていますので、3パターンのいずれかを選ぶことになります。これ以外の紋の数になりますと、フォーマルに着れる格の高い着物とはなりませんので、マナー違反となってしまいます。
五つ紋
紋の数が最も多い五つ紋ですが、この五つ紋の格が一番上とみなされております。この紋をつけることで第一礼装として分類されています。
着物でフォーマルな場に参加するときには、必ず五つ紋の着物を着るようにしましょう。五つ紋は基本的にすべて「染め抜き紋」という手法で紋が入れられています。
紋を入れる位置は決まっています。指定されているところ以外に紋を入れたり、5個以上の紋を入れたりするとマナー違反となりますので、フォーマルな場で着ることができなくなります。
五つ紋の位置
五つ紋は、背中と両外袖、両胸に入れることになります。背中の真ん中に背紋を、両袖の後ろ側にそれぞれ1つずつ袖紋を、両胸にそれぞれ1つずつ前紋が入ります。
三つ紋
五つ紋の次の格となるのが三つ紋です。ただし、この三つ紋ですが、格式高いフォーマルの場で礼装として着ることができません。
格としては略礼装になるので着る際には、着て行く場に合っているのか確認するようにしましょう。
三つ紋の位置
三つ紋は、両外袖と背中に紋を入れる決まりとなっています。両外袖それぞれ1つずつ紋が入ります。一方、背中に入れる背紋は、肩甲骨付近に1つ紋が入ります。おおよその目安ですが、襟元から6cmほど下がった場所になります。
一つ紋
格の中で一番下になるのが一つ紋です。当然、一つ紋は第一礼装にはならないのでフォーマルな場に着て行くことができません。とはいえ、お茶会だったり少人数の会などに少しだけ厳格な雰囲気を出したいときに、一つ紋は使いやすく大変重宝されています。
一つ紋の格も略礼装となります。
一つ紋の位置
一つ紋は背中のみで、入れる位置は襟元からおよそ6cmほど下がった場所になります。
正式な紋
そもそも紋には正式と略式があります。正式な紋として、「染め抜き紋」で字のごとく白く染め抜いてあります。その紋の中でも最高格なのが、「染め抜き日向紋」となり紋の形をすべて染め抜いております。黒留袖や黒喪服などの正装には必ずこの紋を五つ付けます。また、輪郭だけを白く染め抜いた「染め抜き陰紋」がありますが、染め抜き日向紋のほうが正式となります。
染め抜き日向紋
紋の中をすべて白く染め抜いたのが日向紋になります。おもに黒留袖や黒喪服、色留袖や色無地を正装として着る場合に五つ紋を付けます。
染め抜き陰紋
紋の輪郭だけを白く染め抜いたものが陰紋になります。おもに準礼装として、色留袖や江戸小紋、色無地などに付けます。
略式の紋
略式の紋は、繡い(ぬい)紋と呼ばれる刺繍紋が該当します。染め抜きの紋とは違い、着物の地色に合わせて糸の色を選ぶことができます。繡い紋にもすべてを繡う日向紋と輪郭だけを繡う陰紋があります。ただし、染め抜き紋のように格の上下はありません。色無地や江戸小紋に、金糸や銀糸、着物と同じ色の濃淡系で繡った一つ紋または三つ紋の刺繍紋をつければ、略礼装になります。略式の紋は、留袖といった正装の着物に付けることはできません。
洒落紋
紋には遊び心を取り入れた洒落紋があります。この紋も、上記の紋と同様に染めと繡いがありますが、紋の格の上下はありません。色無地や江戸小紋、紬などをお洒落着として着るために洒落紋を一つ紋として付けます。
洒落紋の原型として加賀紋や覗き紋、伊達紋があります。これらの原型を好みデザインにアレンジするかたも増えてきました。
加賀紋
創作性が高く美しい色使いが特徴な加賀紋になります。美しく色とりどりの花々をデザインに取り入れている作品が多くあり非常に人気の高い紋様です。
この加賀紋は多彩な色を使って染め上げるため、加賀紋の入った着物は華やかな場に大変適しています。
江戸時代中期ごろに人気を得ていくのですが、人気になったのは、小さな紋の中に艶やかな配色をして巧みに表現されていることがその理由となります。そこから加賀紋は、現代に至るまで洒落紋として広く愛されています。
伊達紋
伊達紋が始まったのは江戸時代初期とされており、鳥や草花、文字や風景などを大胆にあしらわた紋になります。様々な色の糸を使って鮮やかに表現されるのでオリジナリティー溢れる紋様が多く見られます。
この伊達紋が一般に広く認知されるようになったのは、江戸時代中期以降といわれています。
ちなみに、基本的に伊達紋のデザインに関して制約が存在しません。ですので、取り入れたい紋の色や形を自由にできることから、紋を制作する人の裁量に任せられています。
なぜこのように自由に作れるのかといいますと、着物を装飾することが主な目的になるために、他の紋のような伝統を守るような縛られた規則が存在していないからです。
鹿の子紋
鹿の子紋とは、鹿の背中にある斑点に似せたデザインの紋になります。この鹿の子紋が出来たのは、奈良時代に始まったといわれています。
昔から鹿は神に仕える動物と考えられていたため、この鹿の子紋を使うことは縁起が良いとされ人気の紋になります。
鹿の子紋は目結紋とも呼ばれる洒落紋になり、丸い模様の内側に小さな丸や点が表現され独創的なデザインとなっています。
この鹿の子紋は家紋だけでなく、着物全体に対してのデザインとして使われています。鹿の子紋が入った着物は格が高くないこともあり、フォーマルの場に着るのではなく普段着としての使い方がいいでしょう。
比翼紋
2つの紋を組み合わせたものを比翼紋と呼びます。この比翼紋のデザインとしては、大きく分けて横並びと合成の2種類となります。
2つの紋を横に並べたり合わせることで、互いの結びつきを強調することができます。紋の特徴を上手く組み合わせて1つの紋として仕上げています。
この比翼紋は、別名として恋人の紋と呼ばれており、結婚や結納などのおめでたい機会に使われてきました。着物だけでなく、婚礼の引き出物にも使われています。
崩紋
崩紋とは紋の一部を変えて表現する紋のことになり、崩し紋という別名で呼ばれることもあります。洒落紋の中でこの崩紋はよく知られており、少人数の会などに参加する時に、この崩紋が入った着物を着る人が多くいます。
ちなみに崩紋のデザインですが、明確なルールが定められていないこともあり自由に表現することができます。ご自分で家紋の形を変更する人もいれば、デザイナーに依頼して斬新なデザインを入れる人もいます。
祝いの文様
着物の紋に格があることは理解いただけたかと思います。
そして、着物には紋だけでなく文様や柄が描かれています。これらを知ることでもっと着物が楽しくなってきます。興味がある方は、併せて読んでみてください!
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