付下げ
霞や霧、靄(もや)を思わせる上品なニュアンスの暈しは、柔らかな霞の向こうに山々があったり、港の町並みがあったりします。もともとはそんな自然を映すために、暈しは生まれたのかもしれません。
実際の着物でみますと、段暈しや裾濃(裾が濃い絵羽になっている暈し)は付下げの仲間になります。同じ暈しであっても柄づけによっては、小紋の一種にもなります。暈しは淡い色目で柔らかな印象になるため、装い全体が品よく仕上がり、帯次第で祝賀会から子供の行事や茶会、結婚式など様々な場所で着回すことができます。特に付下げの格でいいますと、訪問着に準ずる略礼装になりますので、祝賀会に伺う立場の装いとしてとてもふさわしい着物になります。主役が訪問着を着る場合には、一歩控える感じで付下げを着るようにしましょう。
色無地感覚の付下げをおすすめ
遠目には無地に見えて、友禅や刺繍の花がさりげなく飛んでいたり、柔らかな暈しが効かせてある付下げを色無地感覚の付下げを呼びます。洋服のような鮮やかなニュアンスのある肌映りより色目を選び、帯で格を持たせるスタイルになります。ゴージャスよりもエレガント、そんな気分で色を選ぶようにするとよいでしょう。
紋意匠地の飛び柄は刺繍で地紋を起こした着物になります。暈しに友禅と金彩や刺繍が施された着物などが人気のアイテムになります。
帯は古典柄を用いながら色目をくっきりと現代的にしたものや柄の配置にモダンさを加えたもの、撚金づかいの帯を選ぶことで格とともに今を生きる私たちらしい個性が加わります。合わせる帯は技法的に重厚なものであれば、袋帯に限らず名古屋帯でも使えます。
着物の柄は?
洋服のほうが多い席の場合ですと、あまり格式ばるよりかは、暈しや花文の飛び柄を選ぶようにしましょう。女性らしさを出した優美な印象が場を華やかに盛り上げてくれます。
帯は?
有職文などの祝い文を選んで、色でお洒落を表しましょう。柄や技法でフォーマル感のある綴、唐織の名古屋帯を合わせのがよいでしょう。
帯揚げや帯締めは?
上品さを意識してコーディネートを考えて、帯まわりの小物を選びましょう。金銀が少し入っているものでも、入らないものでもどちらでも問題ありません。フォーマル感を出したい場合には、淡色系を選ぶようにしましょう。
付下げの着回し
松や桐、扇などのおめでたい柄や雅な王朝模様を続き柄として表現した訪問着風の付下げは、様々なお呼ばれやおめでたい席に装える、華やかで大変見栄えのする着物になります。
四季の草花柄は、着やすいと言われ好まれていますが、はっきりと季節がわかる草花の柄が上前にありますと、違うシーズンに着るときは何となく落ち着かないものです。注目したい草花柄は、具象ではなく、四季や春秋の要素をデザインした着物になります。綺麗な色目で染めた着物でしたら、いつ着ても心が弾むかと思われます。
また、御所解き模様のように、あまり季節感を全面に出さないものになりますと、着回しやすい着物になります。牡丹唐草文以外にも様々な唐草や唐花が着物の模様に使われています。繁栄と成長を表す伸びていく蔓状のこれらの文様は、季節を問わずに装える祝い柄として、およばれなどの社交の着物として活躍する柄ゆきになります。